「いつまでもイキイキ脳」④あなたが自身が認知症と診断? さああなたはどうします?

質問 あなたは最近,家族からもの忘れを指摘され,医療機関を受診し,初期の認知症と診断され,薬での治療が開始されました.家では高齢の配偶者との,閉じこもりがちの生活のため,進行予防とリハビリを兼ねて,デイサービスの利用を勧められました.さらに,認知症カフェの利用も勧められました.あなたはどう思われますか?


1)他人には知られたくないので,自分で脳トレなどをして,進行を防ぎたい

2)行った方が良いとは思うが,他人が多い場所に行くのは苦手である

3)デイサービスくらいなら,行っても良い

4)認知症カフェなども利用して,同じような状況の人などと積極的に交流をしたい(仲間作りをしたい)

5)自分の経験を,同じような状況の人のために役立てたい(支援活動をしてもよい)

黒川 本日の会場の方々は非常に意識の高い方々ばかりのようで,4)~5)の方が多くてびっくりしました.事実,私の診療所に来られている方の場合は,ご主人が認知症でデイサービスを勧められて行きましたが,すぐに「つまらん」と言って帰ってきたと.「2度と行きたくない」と言って家から出ない,どうしたらいいですかという相談を受けます.ご主人も私がかかりつけ医なので聞くと,「やったことがないことはやりたくないので,もう行きたくない」と,なかなか話が進まないケースも多々あります.


基本的に男性は新しいことをするのが苦手です.環境の変化に弱いという性質がありますので,年をとってから新しいことを一からやるのは,なかなか気が進まないことが多いです.私もそうですけれども.ですから奥様に「ご主人が昔から好きだったことは何かありませんか」「昔は将棋ばかり指していたけれども最近は指さなくなった」「じゃあ,将棋クラブならいいんじゃないですか」と勧めてみたり,あの手この手が使えます.


本当に何もやりたくない方は実はそれほど多くありません.「やりたいけれども面倒くさくなった」「やりたいけれど,やり方がわからない」「今さら」という方がおられるので,どこかから引き出しを引っ張ってきて何かを出せれば,それが結果的に人とのつながりになり,デイサービスで生き生きとされている方もおられます.ですから,一度拒否されたからといって諦めることはありません.これは長丁場の話ですから,我々やご家族が,ご本人にできそうなことを一つずつ引っ張ってくることもそうですし,ご本人もそういう努力をしていただければうまくいくのではと思って,日ごろ診療を行っております.

外山 ありがとうございます.中尾先生,いかがでしょうか.


中尾 家族の言うことは聞かないのに,かかりつけの先生のお話ならよく聞くというのはあります.ですから,かかりつけの先生を使っていただいて,できるだけ外に出していくことが大切ではないかと思います.先ほどの朝田先生のご講演の力だと思いますが,「認知症カフェを利用する」や「自分が支援していきたい」という部分まで皆さん方が思われていることに関しては,とてもすごいと思いました.


去年,認知症の対策を練っていこうということで,国の全閣僚会議等が開かれて,認知症施策推進大綱が出ました.そこに「支援していきましょう」という部分があります.今よく言われているのは,認知症の方が認知症の方やご家族をサポートしていく,ピアサポート,ピアサポーターと言われている部分を,できるだけ活用しようということです.では,どこでそういうことをするのか.認知症の人が,認知症かなと言われている方の家に突然訪問してやるのはなかなか難しいです.そこで認知症カフェなどに参加して,話し合いをして交流を深めていくことが必要だと大綱の中でも言われ,多分この通常国会で認知症基本法という法律になっていくだろうと思います.


そして,都道府県や政令市では,認知症のための計画をつくっていきます.大阪府でも,高齢者の保健福祉計画のうち認知症の項目で,今までよりもっと強くやっていく活動に,ピアサポーターの活用,あるいは交流の場,認知症カフェをつくることが出てきます.今でも認知症カフェはたくさんありますが,同じ人が集まるだけになってきて参加しにくい部分があるので,各市町村のほうでも大阪府からの支援を受けながら,もう少し活発になるように働きかけていきます.この計画は,法律が決まった後,しっかりとつくっていかれると思いますので,各市町村で情報を仕入れてやっていただければ,より身近な動きになっていくと思います.

認知症になると,出かけるのが面倒で嫌だというところがあると思いますが,お互いに誘い合って出かけ,話をして交流を深めることで,認知症の進行を遅らせることができるというデータがあります.その方向性で,我々の住んでいる地域の人たちみんなで認知症の方を見ていくという姿勢でお願いしたいと思います.


外山 ありがとうございました.ピアサポートという言葉が出てきましたが,本日の市民講座のタイトルの「みんなでささえあう」というところにも通じるのかなと思います.でも認知症に限らず,福祉全般で,支える側と支えられる側は,決してそれぞれが支える一方,支えられる一方という一方的な関係ではなく,支えているようで支えられている部分がある,支えられているけれども誰かを支えているという考え方に,世の中も変わってきているかと思います. 最後にパネリストの先生で,追加のご発言はありますでしょうか.

中尾 本日は,認知症初期集中支援チームの話をさせていただきましたが,やはり認知症の診療に関してはきちんとした診断をつけてもらわないといけません.いま大阪には2次医療圏ごとに一つずつ,大阪市のほうは地域型が3つ,連携型が3つ,6つの認知症疾患医療センターがあります.適切な医療を提供するために,初期集中支援チームで地域包括及び認知症疾患医療センターにつないでくれるということを追加したいと思います.


福田 男性の方はデイケアなどに行っても「2度といかん」と言われるという話がありました.女性は大体機嫌よく行かれますが,男性はなかなか行きません.ですから,やはり男性が行っても楽しいデイケアをつくらないといけないのではないかと思います.例えばマージャンをやるデイケアマージャン教室や,自分の趣味を生かしたサークル的なものなど.今までやっていた趣味がだんだんできなくなるというのも,認知症の症状の一つとしてはありますが,例えば自分が昔得意だったことを他の人に教えるようなこと,教え合うということをデイケアなどでやると,認知機能の回復までは行かないかもしれませんが,維持するのに非常に役立つのではないかと,パネリストの先生方のご意見を聞いていて思いました.今後そういうのができたらいいなと思います. 

また,認知症の認知度といいますか,知っている方は5~6人に1人ぐらいで,皆さんまだ本当のところはあまりよく知られていないという話もありました.本日ご参加の皆様は認知症について大分知識を得られたと思いますが,まだまだ世間一般でいくと知らない方がおられます.それで偏見を持ってしまうこともあるかと思いますので,やはり勉強して,みんなで支え合える世の中をつくっていくということではないかと思います.そういう中で,泉大津市は,岸和田と同じくだんじりで有名ですが,だんじりのチームが認知症のことを勉強して認知症サポーターキャラバンとなり,地域社会で認知症の方を支えていこうという活動をされています.行政,市民みずから,我々医療者の三者で,認知症の社会を支えていければなと思っております.

外山 最後になりますが,これまでの内容について朝田先生からご講評をいただきたいと思います.

朝田 先生方,ご苦労さまでした.また,皆様も長時間にわたり本当にご苦労さまでした.本日は,内科の先生方が中心になって認知症の予防や対応に関して深い話を本当にわかりやすくされて,また会場の皆様が積極的に関与するという,すごいレベルだということで本当に感心しました.どうもありがとうございました.

福田 今日参加された方の中には「認知症は自分も少し心配だ」「認知症になったら嫌だな」「家族が認知症で困っているんだ」という方がおられたと思いますが,大阪府内科医会は,認知症に限らず生活習慣病を含めいろいろな健康問題について,皆さんと直接お話できる場をつくりたいと思っておりますので,よろしくお願いします.

外山 時間になりましたので,パネルディスカッションをこれで終わらせていただきます.どうもありがとうございました.


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