「いつまでもイキイキ脳」②家族の認知症が気になる場合

外山: さて参加者の皆さんに質問です。

「つい さっきの事を覚えていないことがある,高血圧の薬を飲み忘れる日があるなど,【家族】のもの忘れが気になり出しました.先日は,財布を置いた場所がわからなくなり捜し回っていました.認知症の始まりかもしれないと気付きましたが,会話はスムーズですし,生活上,困るというほどのことはありません.医療機関の受診について,あなたならどう考えますか.」


1)これくらいなら医療機関にかかる程ではないと思うので,脳トレなどで治るように頑張る

2)医師には聞きにくいので,薬局など医師以外の医療スタッフに相談する

3)家族の問題として自分のかかりつけ医に相談する

4)ご本人のかかりつけ医に相談する

5)病院の「もの忘れ外来」に直接連れて行って受診する

6)ネットで「もの忘れの名医」を探して受診する

皆さんの答えはどんなものでしょうか?


近藤 薬局はお薬を渡す場所ですので,数の確認,内容の確認はきちんとしますが,まだあるはずなのに,すぐに「もうなくなった」と来られる,また逆にずっと来なくて,久しぶりに来られたときに「もうお薬はなかったでしょ」「いやいや,ずっとあった.自分はちゃんと飲んでいるんだけど,まだあった」ということもあります.あとは薬の数が合わなくなったりして,トラブルになることもあります.もちろん薬局はそういう方には丁寧に対応しているつもりですが,ご立腹になられたときに,「あれ?」と思って気づくこともあります.


また,薬局は滞在時間が長くて雑談も多いので,その中で物とられ妄想があったり,娘がお金を持っていったなどと身内を信じられなくなったりすることも認知症の症状と思われます.家族からそのような内容で相談をされることも多いです.

今はいろいろな治療法や薬もあり,初期であればいろいろな対応もでき,場合によって専門医療機関の紹介していただけるかかりつけ医にまず相談するよう薬局としても勧めるようにしております.

外山 「ん?」という気づきに関しては,日本全国薬局 “あるある”みたいな感じですが,特に気づいた後が大切ですね.かかりつけ医という言葉が出てきましたが,かかりつけ医の立場から黒川先生,いかがでしょうか.


黒川 本来であればご本人がかかりつけ医をお持ちである場合,その先生に相談されるのが一番理にかなっていますし,わかりやすいと思います.かかりつけ医はもともとの患者さんをご存じなので,どういう性格であるとか,ふだんどのように受診されているかをわかっています.話しやすいかかりつけの先生でしたら直接言っていただくのがいいと思いますが,ご家族の方がかかりつけの先生を全く知らないとか,その先生が非常に気難しい先生で話しにくいケースもあります.


その場合は,家族の方が血圧などでかかっている先生に相談していただくのもひとつの手です.かかりつけ医は大体ネットワークを持っておりますので,どこにどんな先生がいらっしゃって,どんな分野が得意でどんなキャラクターの先生かを大体知っています.ですから,ご本人のかかりつけ医にご相談されるのが1番いいですが,行きにくい場合は,相談される方ご自身のかかりつけの先生にどうでしょうかと聞いてみるのもいいかと思います.実際,そういうケースはたくさんあります.


外山 病院の立場からは藤澤先生,いかがでしょうか.

藤澤 多くの方が大病院での受診を希望しておられるのが日本の状況かもしれません.

少し難しい病名になりますが,慢性硬膜下血腫,原発性甲状腺機能低下症,正常圧水頭症,といった病気は,全て認知症を起こします.しかし,これらは治療すれば認知機能が回復する.すなわち,認知症といっても原因によってはだいたい10~15%ぐらいは治療したらよくなるタイプのものがあるのです.

大病院でCTや専門的な血の検査をしていけば,一部の人は「これが原因ですよ.だからアルツハイマーのお薬を飲むよりは,もとの原因をちゃんと治療しませんか」ということで,大分違う経過をたどることがある訳です.そういう意味で大病院の専門医を活用いただくのは非常にありがたいことだと思います.


ただし,正しい受診の仕方にはコツがあります.何の情報も紹介状もなく大病院に来られても,当然,鑑別すべき疾患はいっぱいあります.しかし日ごろの状態をご存じの方がいて,「経過として数日なのか? 数ヵ月なのか?」 「前に比べて皮膚も乾燥して,何か活気がなくて」等のプラスアルファの情報をくださいましたら,「ああ,きっとこの人は甲状腺ちゃうやろか.便秘も始まっています? じゃあ,甲状腺をまず調べましょう」と.うちの病院でしたら,1時間後にはもう診断がつくことがあります.

ただし,こうした情報がなくて検査を全部したら時間とお金がたくさんかかることになります.日ごろの状態を知っているかかりつけの先生なら,「2~3週間でふらつきもでてきたから頭のCTを」「半年ぐらいで寒がってきたので甲状腺を」と,疑うべき原因疾患につながるプラスアルファの情報をお持ちです.ですから,紹介状もなく大病院に飛び込むのではなく,まずはかかりつけ医にご相談いただいて,紹介状に情報を書いていただいて,大病院を受診することが最も適切だと思います.

これは皆さんにとって時間と費用という面でお得なだけでなく,日頃の状態を知っていただいているかかりつけ医さんと我々大きな病院の力を有効に活用して正しい診断・治療に迅速に結びつける,という意味で非常に大切なポイントだと思います. ぜひともかかりつけ医を介して,大病院にご紹介いただく様にお願いします.

外山 かかりつけ医,病院,それぞれ役割があるということですね.

福田 かかりつけ医の立場,病院の立場,そして薬局の立場からと3つご紹介いただきましたが,その中のキーワードは“変化”です.ずっと診ているかかりつけ医だからこそわかる変化.かかりつけ薬局の薬剤師さんだからわかる変化.今までちゃんとできていたことができなくなった,服装がだんだん乱れてきた,今までひげをきれいにそっていた方が,だんだん無精ひげになってきたなどという細かい変化が,実は軽度の認知症の始まりということもあります.そのあたりに気づくのは,やはりかかりつけ医であるということ,そして気軽に相談するのもかかりつけ医ではないかと思います.また,治療できる病気はいくつかあるので,そこもきちんと診断をつけて治療していくということになろうかと思います.

大阪府内科医会のお医者さんのBLOG

かかりつけ医の集まりである内科医会から市民の皆様へ健康情報をお届けするサイトです