「いつまでもイキイキ脳」①認知症にならないよう,また悪化させないために役立つことは?

外山 参加された皆さんに「認知症にならないよう,また悪化させないために役立つと思うことを3つ選んでください」とお尋ねしたところ、結果はつぎのようになりました.

これを踏まえて,パネリストの先生にコメントをお願いします.

藤澤 1位になった「運動」は,実はWHOが出している認知症予防のためのガイドラインの中でも,「強く推奨する」とはっきり書かれており、大正解です.

ただし,「中等度以上の有酸素運動」と条件があります.これは少し早足歩きで大体週150分に相当します.毎日でしたら20分ちょっとの運動となり、日頃運動しておられない方には少しきついかもしれませんね。また,もうひとつ大切なことは,有酸素運動を10分以上続けることです.糖代謝に関しては5分ごとでもいいとされていますが,認知症に関しては10分以上続けること,早足で毎日20分を心がけることが「認知症予防に強く推奨する」とされています.ですから,ぜひとも有酸素運動である散歩を続けていただきたいと思います.

また,この結果では「ゲーム」下位ですが,いま医学の分野では注目されています.実は,認知症予防のために特別に作られた精巧なゲームであれば,認知症の予防につながることが科学的に証明されつつあります. 2013年の科学雑誌「Nature」に,「高齢者の認知機能~ビデオゲームの効果」という論文が出ました.何か1つのことをするという単純なゲームではなく,運転と同時に別のことも行うという多重課題(マルチタスク)を同時に行うように設計されたゲームであれば,認知症予防に良い結果が得られています.


外山 ありがとうございました.ゲームも物によっては良いということですね.2つのことを同時並行でとのことですが,散歩をしながらゲームをすると危ないので,それはしないほうがいいかと思います.(笑)


近藤 私は,「禁煙」の順位が低いのが気になりましたが,喫煙はWHOがはっきりと認知症のリスクを高めると発表しています.喫煙者は非喫煙者よりも認知症を発症する危険性が45%高い,全世界のアルツハイマー病の2割が喫煙者である,しかも喫煙の量が多ければ多いほど発症の危険性が高まると警告を出しています.タバコを吸われない方も周りの喫煙者の方に伝えていただきたいと思います.


また,「おしゃべり」も認知症予防になると思います.ただ,これは会話をする,人と接する,社会参加をするという意味です.会話は脳のいろいろな部分を使います.また刺激を与えたり,ストレス解消にもなります.医学的にも,懐かしいものや映像を見せてそれについて語り合うような「回想法」という,薬を使わない治療法も精神科で行われています.会話は頭を使って人のことを考えながらしますので,すごく意味があります.「おしゃべり」は,今後独居の高齢者が増えると言われている中で,社会参加をして他者とのかかわりを持つことがすごく大事だという意味で大切だと思います.

外山 おしゃべりは会話や人とのかかわりということですから,他人の話を聞かないで一方的にしゃべりまくるというのは少し違うようです.


福田 「ゲーム」や「おしゃべり」のキーポイントは,いわゆる一方通行ではないということです.双方向のやりとりをするのが一番大切と思います.そういう意味では,見ているだけになる「テレビ」が低いのは正解だと思います.

ただ,私が少し残念に思ったのは,「生活習慣病の治療」が上3つに比べて低かったことです.

実は,糖尿病の人はそうでない人に比べて,2倍ぐらい認知症になりやすいといわれています.糖尿病だから認知症になるわけではなくて,血糖値が高いと認知症になりやすいということですので,しっかり治療していきたいものです.


また,日本ではいま認知症の患者さんが増えつつありますが,イギリスは,ここ数年で認知症の患者さんが20%ぐらい減ってきたという報告が出ています.国を挙げての施策を行い,例えばレストランでの塩分摂取量をしっかり減らしたのが一つの理由ではないかとの報告もあります.生活習慣病の治療は,長い目で見ると認知症の予防という意味では非常に大きな効果があると思いますので,皆さんしっかりと意識を持って治療をしていただきたいと思います.

外山 すごく地味な感じがしますが,持病を治療するのもとても大事ということですね.

大阪府内科医会のお医者さんのBLOG

かかりつけ医の集まりである内科医会から市民の皆様へ健康情報をお届けするサイトです