塩の話 「歴史・文化編」
前回は「塩の働き」と、塩にちなんだ言葉として会社員を意味する「サラリーマン(Salaryman)」の由来についてお話ししました。今回も、塩と人との切っても切れない関わりをご紹介します。
◯ サラリア街道(Via Salaria)
サラリア街道は、古代ローマの街道の一つです。ローマからアドリア海沿岸の Castrum Truentinum まで、Rieti や Asculum を経由して伸びる全長242kmの道でした。
“Salaria”はラテン語で「塩」を意味します。この道は、サビニ人がテヴェレ川河口付近の沼地へ塩を採取しに行く際に使ったもので、ヨーロッパ各地にある「塩の道」の一つとされています。
◯ 塩小路通(京都市)
京都市の塩小路通は、平安京の時代に建てられた六条河原院に由来します。六条河原院を築いたのは、紫式部の『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルといわれる源融(みなもとのとおる)です。
この邸宅の庭園は陸奥国の塩竈の風景を模して造られ、尼崎から毎日30石の海水を運び入れ、塩焼きが行われていたと伝えられています。その海水を運んだ道筋が、現在の塩小路通とされています。
◯ 世界の地名と塩
ヨーロッパの内陸部では海から塩を運ぶ必要があり、また岩塩を見つけた町は大きく栄えました。街道の多くが「塩の運搬路」から始まったとされるのもそのためです。
「ザルツブルク」という地名は「塩の町」を意味します。近郊には岩塩坑があり、観光名所となっています。モーツァルトの生まれた町として有名ですが、2000年以上前から岩塩によって栄えていた場所です。
日本にも「塩尻」(長野県)、「塩釜」(宮城県)といった塩にまつわる地名があります。内陸の塩尻では海から塩を運び蓄え、塩釜では海水を釜で煮詰めて塩を作っていました。
塩は「高血圧の原因」として悪者扱いされがちですが、人が生きていくうえで欠かせない大切なものです。古来より貴重な資源として扱われてきたことも理解できます。 ただし現代では簡単に手に入るようになったため、どうしても「摂りすぎ」になりがちです。健康のため、そして血圧管理のためにも「減塩」を心がけましょう。
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