麻疹(はしか)について  その2

麻疹の症状と予防 合併症リスクとワクチンの重要性

 続きまして、麻疹の症状についてお話しします。

 まず、感染後10~12日間の潜伏期間を経て発症します。発症すると、発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。この時期を前駆期(カタル期)といいますが、この期間に口腔内にコプリック斑といわれる白色小斑点が認められます。この斑点があれば診断としてはほぼ疑いのないものとなりますが、続いて起こる発疹出現後には急速に消失します。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します(発疹期)。発疹は、顔面、頸部、耳後部から始まり、体幹および四肢に急速に拡大します。皮疹は点状~小豆大の赤いプツプツとした発疹ですが、発疹同士が癒合していきます。発疹出現後3~4日間すると解熱し、徐々に体力は改善します(回復期)。皮疹は14日ほどで退色しますが、色素沈着はしばらく残ります。

 麻疹は、合併症を引き起こすことがあり、二大死因として肺炎と脳炎が挙げられます。肺炎は6%に認められ、乳児では死亡例の60%が肺炎に起因するものと言われています。病初期にはウイルス性肺炎、発疹期後には細菌性肺炎が多く認められるようです。脳炎は0.05~0.1%にみられ、思春期以降の麻疹による死因としては肺炎よりも多く、発疹出現後2~6日頃に発症することが多いようです。そのほかにも、中耳炎や喉頭炎、心筋炎などを起こす可能性があります。中でも怖い合併症として、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)があり、麻疹感染後4~8年間の潜伏期間を経て進行性の中枢神経症状を起こし、予後も非常に悪いとされています。

 治療は、特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。手洗いやマスクなどでは十分に予防することはできないため、ワクチンによる予防が最も重要です。現在、日本においては1歳児(第1期)と小学校就学前1年間の幼児(第2期)を対象に、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)による2回接種法が定期接種として導入されています。麻疹流行国(東南アジアなど)に渡航される際にも接種できますが、任意接種となるため有料での実施となります。

 以上、麻疹についてお話させていただきました。関西では海外からの来訪者が多く、渡航されない方も麻疹感染者と知らないうちに接触する可能性があります。保健所からは逐次、発生場所などがニュースで報道されています。もし感染者と接触しているかもしれない方で、何か症状などが気になるようであれば、慌てて医療機関に行かず、まずはかかりつけ医に電話などで問い合わせてみてください。


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