大阪府内科医会 第27回市民公開講座の報告

2026年3月20日、恒例の市民公開講座を開催し、多くの皆様にご参加いただきました。誠にありがとうございました。今年のテーマは「がん検診」。あなたとあなたの大切な人のために、がん検診を受けましょう――その大切さを、当会理事の藤田聖子先生が講演いたしました。第1部では、その概要をご紹介いたします。


春分の日の休日に、「知ろう、受けよう、がん検診」をテーマとした市民講座を開催しました。お休みにもかかわらず多くの方にご参加いただき、会場には健康への関心の高さが感じられる温かい雰囲気が広がっていました。春分の日は昼と夜の長さが同じになる節目の日です。このようなタイミングに、ご自身の健康について一度立ち止まって考えていただく機会となればという思いでお話をさせていただきました。

講座の中では、まず日々の診療で感じている実感をお伝えしました。「検診で偶然見つかって本当に良かったですね」と言えるケースがある一方で、「なぜあの時受けていなかったのか」と言葉を失う場面も少なくありません。この差はとても大きく、まさに“受けたかどうか”が分かれ道になることを強く感じています。

現在、日本のがん検診受診率は約50%にとどまり、2人に1人は受けていないのが現状です。しかし、がんは日本人の死因の第1位であり、生涯でがんと診断される確率は男性62.1%、女性48.9%と、ほぼ「2人に1人」の時代となっています。また、年間の新規がん罹患者数は100万人を超えており、がんは誰にとっても身近な病気です。こうした現状を踏まえ、「怖いから受けない」のではなく、「正しく知って、賢く受ける」ことの大切さをお伝えしました。

今回の講座では、厚生労働省が推奨する5つのがん検診について、具体的に解説しました。

まず肺がん検診は、40歳以上を対象に胸部レントゲン検査を行い、喫煙歴のある方などには喀痰細胞診を追加します。喫煙指数(1日の本数×年数)が600以上の場合がハイリスクの目安となります。堺市では無料で受診可能であり、大阪市でも基本は無料、喀痰検査のみ追加費用で受けることができます。

胃がん検診は、バリウム検査と胃カメラの2つの方法があります。近年はピロリ菌感染が胃がんの大きな原因であることが知られており、ピロリ菌の検査や除菌治療を考えて胃カメラを選ぶ方が増えています。ピロリ菌は慢性胃炎を引き起こし、長い年月をかけて胃粘膜の萎縮を進め、がんのリスクを高めます。なお、胃カメラ自体は検診として無料で受けられる場合がありますが、ピロリ菌の検査や除菌治療は保険診療となります。

大腸がん検診は、便潜血検査で行います。がんはもろい血管を作るため、便に血液が混じることがあり、この性質を利用した検査です。見逃しを防ぐため2回法が推奨されており、1回でも陽性の場合は大腸内視鏡検査が必要です。堺市では無料、大阪市でも低額で受けることができます。

乳がん検診はマンモグラフィーによる検査で、40歳以降に罹患率が増加することが知られています。また、日頃から乳房の変化に気づく「ブレスト・アウェアネス」も重要であり、入浴時などにしこりや左右差、皮膚の変化がないか確認する習慣を持つことが勧められます。

子宮頸がん検診は20歳以上の女性を対象に行われ、細胞診によって早期発見が可能です。HPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因であり、若い世代でも発症することがあるため、定期的な受診が重要です。また、ワクチン接種と検診を組み合わせた予防が有効であることもお伝えしました。

講座では、「なぜがん検診を受けないのか」という点についても触れました。「症状がないから」「忙しいから」「がんと分かるのが怖いから」といった理由が多く聞かれます。しかし、がん検診は症状がないうちに受けるものです。また、精密検査が必要と言われた場合に受診しないケースもありますが、それでは検診の意味がありません。ぜひ一歩進んでいただきたいところです。

実際には、がん検診で陽性となる方は一定数いますが、その中で実際にがんが見つかる方はごく一部です。だからこそ、過度に怖がる必要はありません。むしろ、早期に見つかれば治療の選択肢も広がり、5年生存率が90%を超えるがんも多くあります。一方で、進行してからでは治療も大変になり、生活への影響も大きくなります。

最後にお伝えしたのは、「いつか受けよう」ではなく「今年受けよう」ということです。堺市や大阪市では、費用面も含めて受診しやすい環境が整っています。あとは一歩踏み出すかどうかです。

がん検診で防げたかもしれない後悔は、とても重いものです。どうか今回の講座をきっかけに、ご自身だけでなく、ご家族や大切な方にも声をかけていただきたいと思います。その一歩が、未来の健康を守ることにつながります。

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